すべてはエクセルの手入力から始まった

大手人材企業から中小企業へ転職して最初に驚いたのは、勤怠管理がエクセルの手入力だったことです。いきなり本格的なシステムを導入するのではなく、まずは「エクセル屋さん」として全部署を回り、壊れた数式や業務課題を一つずつ聞き取るところから始めました。VLOOKUP、INDEX、MATCH、SUMIFといった関数を使った改善を積み重ね、現場の信頼を得ながら、生成AIも活用してマクロ開発に着手していきました。

中小企業のDXが辿る5つの段階

振り返ると、DX推進は次の順序で進めるのが現実的でした。

01
エクセル活用での試行錯誤いきなりシステムに頼らず、今あるツールの使い方を磨く
02
低価格・使いやすいシステムの導入小さく試せるツールで、デジタル化への抵抗感をなくす
03
本格的システムの導入業務の中核を担うシステムに投資する
04
データ活用の推進蓄積したデータを経営判断に活かす
05
競争優位性への転換デジタル化そのものが自社の強みになる

この順序を無視して、いきなり本格的なシステムから入ると、高コストの「無用の長物」になりがちです。

実際に導入したツールと費用感

ツール用途メモ
HRMOS勤怠勤怠管理過去に導入失敗した経緯があり、浸透まで約1年かけた
SmartHR人事情報管理遊休契約を活用し、顧問社労士と連携して紙情報を入力
Groupsessionスケジュール・ファイル共有・ワークフロー無料(PC)〜100円/年/ユーザー(モバイル)という低コストから着手
CMSホームページ管理約100万円で本格導入
kintone顧客管理業務に合わせたカスタムアプリを構築
LINE WORKS現場の業務連絡現場スタッフとの日常的な連絡手段として導入

給与計算業務を引き継いだ際は、月2日かかっていた手入力作業を、HRMOS勤怠からのCSV出力とエクセル連動で自動化しました。この成功体験が社長の関心を引き出し、各部署の予算策定シミュレーション機能の開発にもつながっています。

2つの失敗事例

うまくいった話ばかりではありません。次の2つは、実際に使われなかった失敗例です。

  • PowerBI: 分析ツールとしては優秀でしたが、経営層の関心を引き出せず、一度見られただけで終わりました。現場の課題を解決する前に、便利なツールを入れても定着しません。
  • Adalo: ノーコードツールとして個人的には有益でしたが、データ容量の増加とともに読み込み時間が膨大化し、現場での本格導入には至りませんでした。

「DX」という言葉が独り歩きしがちですが、本質はエクセルでの試行錯誤から始まる地道な積み重ねです。順序を飛ばすと、高コストの無用の長物が生まれるだけです。

当事務所の視点: 労務の現場を知っているからこそ、勤怠・給与・36協定管理といった法令が絡む業務のシステム化で、どこに落とし穴があるかを正しく見極められます。kintoneでのカスタム開発や、SmartHR・HRMOS勤怠などの導入支援にも対応しています。

まとめ

DX推進は、いきなり本格システムから入るのではなく、エクセルでの試行錯誤→低コストツール→本格システム→データ活用→競争優位性という順序で進めるのが現実的です。自社が今どの段階にいるのか、一度整理してみることをおすすめします。