そもそも、なぜ働き方改革が必要とされたのか

働き方改革関連法の背景には、長時間労働による健康被害や過労死の問題があります。労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間が「労働時間」であり、この時間が際限なく延びることのないよう、罰則付きの上限規制が導入されたのが2019年以降の一連の改正の出発点です。

ここでは、建設業など労働時間管理が特に難しい業種への助言でも繰り返し説明している、実務上の重要ポイントを7つに整理して紹介します。

①年次有給休暇の時季指定義務

年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、そのうち5日について、会社が時季を指定して取得させることが義務付けられています。労働者からの申出を待つだけでなく、会社側から計画的に取得させる必要がある点が、以前の制度との大きな違いです。

②時間外労働の上限規制

36協定(原則)特別条項(臨時的な場合)
1か月45時間以内100時間未満(休日労働含む)
1年間360時間720時間
その他―月45時間超は年6回まで

特別条項を結んでいても無制限ではなく、「複数月平均80時間以内(休日労働含む)」「単月100時間未満」という共通の上限があります。特別条項があるから大丈夫、という認識のまま、この複数月平均の上限を見落としているケースは実務上少なくありません。

③割増賃金率の引き上げ

1か月の時間外労働が60時間を超える部分について、割増賃金率は25%から50%に引き上げられています。以前は中小企業に猶予措置がありましたが、現在は企業規模にかかわらず適用される点に注意が必要です。

④労働時間の客観的な把握義務

労働安全衛生法により、タイムカードやパソコンの使用時間の記録など、客観的な方法で労働者の労働時間の状況を把握することが義務付けられています。把握した記録は3年間保存する必要があります。自己申告だけに頼った勤怠管理は、この義務の観点からもリスクがあります。

⑤未払い残業代の消滅時効の延長

2020年4月以降に支払期日が到来する賃金請求権について、消滅時効が2年から5年(当分の間は3年)に延長されました。これに伴い、賃金台帳などの記録の保存期間も同様に延長されています。未払いが発覚した場合に遡って請求される期間が長くなった、という点は経営上のリスクとして認識しておく必要があります。

⑥違反した場合の実効確保の手段

上限規制などに違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となり得るほか、企業名が公表されるケースもあります。公共工事の指名停止事由に該当したり、技能実習生の受け入れが5年間停止されたりするなど、業種によっては事業継続に直結するリスクもあります。

⑦まず何から着手すべきか

実務相談の現場でまずおすすめしているのは、次の2点です。

  • 雇用契約書(労働条件通知書)、就業規則、労働者名簿・賃金台帳など、雇用関係書類の整備
  • タイムカードや勤怠管理システムなど、労働時間を客観的に把握できる手段の整備

特に現場作業が中心の業種では「出社時間イコール労働時間ではない」という労働時間の考え方そのものが誤解されているケースが多く、まずは自社の勤怠管理の実態を正しく把握するところから始めることをおすすめしています。

あわせて読みたい: 「移動時間」や「手待ち時間」が労働時間に該当するかどうかは、実務上非常によく相談を受けるテーマです。判例をもとにした考え方は、関連記事で詳しく解説しています。

まとめ

働き方改革関連法は一つの制度ではなく、年次有給休暇・残業時間の上限・割増賃金率・労働時間の把握義務・消滅時効・罰則という複数の改正が積み重なったものです。自社の労務管理が最新のルールに沿っているか、この7つのポイントを軸に一度棚卸ししてみることをおすすめします。